コラム・あの人に聞く


〜 強靱な企業づくりをすすめる会員の取り組み 〜
月刊誌特集 I では、会内外で活躍する会員を毎回紹介します。会員の経営する企業の取り組みや、経営者である会員自身の企業経営に対しての考え方などを知ってもらうことで、同友会が目指す企業像、経営者像、そして中小企業と社会との関わりへの理解を深めてもらえることを期待しています。第16回は、大阪同友会 副代表理事の藤原義春氏です。
 2年前に新築された広い本社工場に入ると、可愛らしい オレンジのロボットが出迎えてくれました。いろいろなトロフィーや賞状が飾ってある2階の社長室で、藤原さんに自社経営についての話を聞きました。

先が見えない独立
 藤原さんは、バブルが崩壊して世の中が混沌としている時代に独立を決意し、藤原電子工業を創業しました。実家の仕事を2代目の社長と10年共にやってきましたが、業界の先行きが危機的な状況で、仕事に対する方向性と考え方がズレてきたためです。しかし、独立してからの10年間は借金も多く、非常に苦しい経営だったといいます。毎日3時間睡眠で奴隷のように働きずくめ、そんな中で取引先が3社も倒産して売り上げが下がり、さらに苦しい経営と なっていきます。あとでわかった話ですが、子どものお年玉を使って奥さんが生活をやりくりしていたということなど、大変な独立からの10年間を送りました。

バリが出ない金型
 そのような苦労の中、お客さんが金型で抜き加工をしたあとの基盤につくバリについて不満を口にしているのを、よく耳にしました。金型職人でもあった藤原さんは業界では当たり前のことであったバリについて「バリの出ない金型を作製すれば、お客さんが喜び注文が増えるのでは」 と、金型の作製を思い立ちます。しかし、当時は金型の作製は外注で、作製依頼するお金もなく考えを形にすることはできませんでした。
 独立からの10年を必死で乗り切ったあと、少しずつ経営が良くなってきた時に、約10万円を投じてバリの出ない試作金型を作ることに成功します。業界では画期的なバリの出ない抜きが、金型や抜き作業を含めて完成しました。そして「バリの出ない藤原電子工業の抜き」は、少しずつ業界で浸透していきます。さらに大手企業から直接の連絡も入ってくるようになりました。この成功のおかげで会社の業績もしだいによくなっていきます。

気持ちを下げない社員
 業績が良くなってくると、この先さらに仕事を増やしていくために社員を充実させていかなければいけません。しかしこの当時の社員は、仕事に対する自分の自信もなくモチベーションも低く、遅刻や無断欠勤は当たり前、新しいことなど「やったことないからできません」というような状態でした。
 そんな中、奈良高専のインターンシップ生が当時在籍していたことと、たまたま第1回ロボコン大会が始まったことがきっかけで、社員を大会に出場させることにしました。徐々に社員はロボコン出場に夢中になっていき、そしてなんと大会では「優勝」しました。これをきっかけに社員は仕事に自信を持ち、モチベーションも上がっていきます。
 そしておまけに、その時の大会で準優勝した大学生が藤原電子工業に興味を持って入社してきます。

決してとまらない会社
 最初は社員のモチベーションを向上させるために始めたロボット作製が、少しずつ会社の仕事と結びついてきます。今では、業務用ロボットを新しく開発して自社の作業を自動化させています。そして新しい社員の入社も増えてきました。現在では会社の実務は徐々に、後継者である息子さんに任せておられます。これから先はAIやロボットが普及する世の中、藤原電子工業もますます活躍する場を広げていくことでしょう。

だからやめない同友会
 藤原さんが同友会に入られたのは2005年です。同友会に入会して「理念、人づくり、人間力など赤石さんの話を聞いてゾクゾクとした」と話します。自身がまさに同友会が刻んだ歴史と同じ経験をしてきたので共感したとのことです。自身の考えていた経営、理論がココ(同友会)に、成文化されてあったのです。藤原さんは同友会にひかれていきました。
 藤原さんは、同友会で理念、経営を会員と一緒に学んできました。自分自身が経験してきた歴史もあり、同友会での学びはどんどん会社経営に生かされていきます。「同友会での学びもほとんど生かされてきたのなら、いつ同友会をやめてもいいのかも知れないですね?」という質問が、たまたま話をしている時に出たのですが、藤原さんは間髪を入れずに言いました。「同友会は運動なんですよ。そのためには中小企業家がもっと集まらないといけないのです。中小企業の環境をよくするために、日本や地域をよくするための運動をすすめていかないといけないのです。だから同友会をやめないですよ。いい会社をつくる学びと共に一緒に同友会運動をすすめていきましょう」
  その思いこそが、求められる企業として藤原電子工業を存在させ続けるのではないでしょうか。中小企業としての責任とあり方、そして成長、発展を藤原さんから学ばせてもらえた取材となりました。
 社長室のすみに飾られていた、ロボコン大会優勝のトロフィーが光り輝いていました。

〜取材を終えて〜
偶然、取材日の前日に行われた役員研修講座で藤原さんの話を聞き、自社の所在地域の特性上、いまいちピンときていなかった地域社会と関わることの大切さを学びました。次は、藤原さんの自社経営に関する話を聞きたく、取材に同行しました。
 同業他社が、中国などの海外に進出したり、廃業したりしていく中、自社でしかできない技術を開発することで、その技術力が一人歩きし、大手企業から「藤原電子工業に仕事を頼みたい」と言われるまで上り詰めた藤原電子工業。そこに行き着くまでの苦労や葛藤も笑顔で話される藤原さんがとても印象的でした。
 止まることなく進み続ける藤原さんのお話を聞く中で「自社はサービス業だからなかなか自社でしかできない技術(サービス)の開発は難しい」と最初から諦めるのではなく、同友会で学び、実践・挑戦を続けることの大切さを改めて教えてもらいました。
(文:情報化・広報部 谷澤 写真:荒田)

Profile
企業名: 株式会社 藤原電子工業
所在地:八尾市南木の本
創  業:1993年5月
資 本 金:3,800万円
年  商:5億6千万円
社 員 数:30名
業務内容:プリント基板のプレス加工、金型製作及び 電気機械器具製造業

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